蘇部健一『届かぬ思い』『木乃伊男』

 蘇部さんらしい作品だったと思います。そう、本格ミステリでがっちりというのではなく、やはりこの人は「児童文学」という路線でミステリを書くのがいいのだろうと思います。「ふつうの学校」シリーズ、面白いですし、この2冊だって、もうちょっといじったら十分に小学生にでも楽しめるものじゃないかなぁ、とか思いました。というか、そういう書き手が少ないと思うので、この人はその世界で頑張らないと駄目だ、なんて思ったりも。基本遊びが好きで真面目な人だと思うので……。
 内容の感想にいきましょう。『届かぬ想い』これは、なかなか好きな設定です。ミステリというよりは、SFかな?という感じはしますけど、「タイムトラベル」と「パラドックス」を上手に練り混んだ作品だと思います。これ矛盾ないようにするの大変だろうなぁ。でも、全体的に切なくまとまっていたので私は大満足です。ラストのあたりではSFというよりは寧ろホラー?とか思ったりもしましたが。「世にも奇妙」とかでできそうだと思いました。←というコメントをよく書くけど、コレは私なりの褒め言葉です。映像化しやすいだろうというのは、きちんと絵が浮かんだということなので。
 『木乃伊男』はですね、これもまたミステリなのに、最後の一枚の絵のせいでホラー!!とか思ってしまいました。「ページをめくらないで下さい。真犯人が分かってしまいます」の意味も分かりました。成る程なぁ。ありがちな「鏡の屋敷」と「双子」と「顔の見えない男」という三つの組み合わせですけれど、これはこれで新しい。でも「手記」という形をとっているせいか、ちょっと分かりにくい部分も。まぁ密室本なんでこのくらいでもいいのかな?

届かぬ想い (講談社ノベルス)

届かぬ想い (講談社ノベルス)

木乃伊男 (講談社ノベルス)

木乃伊男 (講談社ノベルス)