鏑木蓮『屈折光』

医者であるということと、尊厳死と、親子の形と、BSEについて書かれたミステリです。
なんというか…医療のこととか牛のこととかかなり詳しく書いてあって「あれこの人お医者さんだっけ?」みたいな感覚に陥るのですが、そういえば前作『東京ダモイ』はシベリア捕虜収容所で起きた殺人事件で……「あれこの人って戦争経験者?」とか思ったんでした。
資料を読み込んで、自分のものにする力の長けている作家さんなんだと思います。
だから臨場感はたっぷり。
ただ、推理小説としては弱い感じ。そんなものを求めていたわけじゃないので、まぁいいんですけど、やっぱり印象に残るのは、「死」の捕まえ方。
医療における「死」の位置づけ。
忌むべきものではないと分かっていながら、やはり身内の死に寛容になれない部分というのはどうしてもあると思います。

貴方は、自分の親や子の延命措置の許諾を医者から尋ねられた時、どうしますか?

屈折光

屈折光