小路幸也『高く遠く空へ歌ううた』

 それと、予告通り感想文。ちなみに、明日からは前々から読む読むと言っていたいーちゃんを、今度こそ一気に片付けたいと思ってます。
小路幸也『高く遠く空へ歌ううた』(講談社
 一言で言うと、不思議な世界観。一冊目の時も…妙な気持ちになったのですが、今回はもっと。幻想小説とは違う、ミステリとも違う、SFとも違う、不安定な感じ。だから、どっちつかずな感じがして、どれにせよ「このやり方は禁じ手」と思ってしまう。だけど、それ以上に不思議な雰囲気に圧倒されます。「懐かしい」と感じさせる。知りも知らない町のことなのに。不思議です。そして、これは作者自身の回顧録なんじゃないかと思わせます。現実感が薄いのに、そういうコトってあるのかな、と何故か思わせる。多分、感性のある文章なんでしょうね。決して巧いとは思わないのに、引きずり込まれる。どういう風に見つめていけばいいか悩む所ですが、嫌いじゃないです。

 空の青さを知らないからと言って、決して不幸じゃないように、何かを見てしまったり、感じてしまったりすることは不幸への道標ではないのだと思いました。

どこかが欠けてしまっていても、どこかが余分でも、それは原因じゃない。何があったって、真剣に生きることはできるんです。諦めたり、嘆いたり、嘲笑したり、バカにしたりする前に、まず自分の生きることに真剣になる。まだ、未来は残されているんだから、そうすることが、どうしようもなくなってしまった大人達への、少なからずの希望になるのだと思いました。

 3冊目、今度はどんな不思議な雰囲気を醸し出してくれるか、楽しみです。

高く遠く空へ歌ううた (Pulp‐town fiction)

高く遠く空へ歌ううた (Pulp‐town fiction)