石持浅海『水の迷宮』
石持さんという人は、とても綺麗に悲しみを書く人だと思います。しかも、それは「どうしようもない」タイプの哀しみ。それを乗り越えるべく、用意されたような謎と、謎解きだと私は思います。前2作もそんな感じでした。特異な状況下を舞台にするのが上手い作家だと思いますが、それよりも、この悲哀を消化する姿勢を私は買いたいと思います。納得のいく終わり方であっても、そうでなくても、この人の決着の付け方は、それなりに評価しています。
今回は、水族館が舞台。その水族館で働いていた片山の不可解な死。そして、彼の死の時を踏襲したような新たな事件。そこから、解き明かされる、彼の本当にしたかったこと…。その夢が明るみになった時、私もまた泣きました。壮大で、素晴らしい水の迷宮。そこだけが、やたらと鮮明に思い描けて、哀しくなったのです。
それから、深澤さんに惚れました。探偵役は格好いいものです。だけど、この人の施した幕閉じは、解き明かすだけの探偵のソレとは違うので。納得いくいかないはともかく(と何度も言うということは、納得していないということですが)、見事な終わらせ方でした。
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/10/20
- メディア: 新書
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