西尾維新『ネコソギラジカル』(上)(中)(下)
はい、おわり。そんな物語ではありませんでした。
とにかくお祭り騒ぎな感じ。騒ぎというか…終始不穏な空気の流れている最終話でした。ここぞとばかりに詰め込んだ。まるで、後片付けする前に、いらいらしちゃって玩具箱をひっくり返した感じでした。でも、きちんと収まることが出来たかと言うとそうでもない。そこにはあふれちゃったモノがたくさんありました。それがかなり悲しい。だけど、仕方がない。「ひっくり返した時に、壊れるような玩具はいらない」と、作者が…あるいは、それ以外の何者かが排除してしまっている感じがしました。だけど、鮮烈なイメージをのこして壊れた彼らのことを、リタイヤした彼女らのことを、私はかなりいとおしく思います。や、立派でも、格好良くもないですけど。最後まで読み終えて、タイトルが秀逸だと思えるのは、そういう意味です。ネコソギにラジカル。まさに。
そして、今回はいろいろと愕然とすることが多かったです。まず、「これって、ひそかに成長の物語だったんだ」ということ。いーちゃんはどこまでたってもいーちゃんでしたが、それでも、「生きたい」と決意したところが、かなり驚愕でした。未来を見据える力のない、ただ呆然と今しか生きていない彼が、どうして、そんなにも前向きになれたのか。「僕には、守りたいものができてしまった」というような台詞を連発していたことを思うと、当然のことのような気もしますけど。それから、「周りが傷つくくらいなら、自分が」という思考にも、多少変化があったのではないかと思います。最初は失敗してますけどね。「周りも自分も傷つかない」では、やっぱり駄目なのだと思います。その痛みを許容してこその、「生」なのでしょう。うん、いーちゃんは格好良くなったと思います。それから、いーちゃんを取り巻く数々の人たちも。だからこそ、今回は、結構泣けました。
変化はあって、変化はない。それでも、大団円だとは言いがたいけれど、それでも、ハッピーエンドだったなら、私は満足です。とくに、いままでつらかった蒼や、橙が、赤が幸せなら、それでいうことはない。どこかで生きている人間失格も、殺せない殺人鬼のままでいられたら…。
長くはなく、ただ濃厚な時間を味合わせてもらいました。こんなに面白い物語を与えてくれた西尾維新に感謝。ま、最後の最後まで戯言でしたけどね(笑)
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