高田崇史『毒草師』(幻冬舎)

 やっぱり、タタルさんが好きだ……。ミナカタさんはなかなか好きになれません。そんな正直な感想から参りましょう。QEDの一部分としてなら申し分ないかなー…なんて思ってしまいました。タタルさんがさらに重なった事件の謎解きをして…みたいなのならもっとわくわくしたでしょう。なんか、いけ好かない男としての印象が強いので、どうも物語自体もそーゆー雰囲気が漂う……もちろん偏見ではありますが。

 ただ、高田流の歴史・薬のチョイスの仕方は健在。歴史ミステリとしては、十二分に満足。そうそう、いつか伊勢物語を取り上げて欲しかったのよ!! という感じでしたから。大学の時に業平くん及びその関係者達には興味を持ったので、歌が解き明かされる(想像の範囲?)部分は「おおおお…」となりました。「世の中にたえて桜のなかりせば…」あの歌の真意は、その説明が正しいのであれば、とてつもなく重いものなのでしょう。私は世間一般の認識と違って、業平は歌にしか逃げ場が見いだせなかった哀しい男ってイメージなんですが、これを読むと、さらに精神的にも一筋縄ではいかない筋の通った男という像にもなります。ああ、だからこそ、もっと蘊蓄を聞きたいのですよ。タタルさんの役目でしょうか? なら、二番煎じでもいいので、もう少しこのあたりの時代のことを読んでみたいものです。

毒草師

毒草師