「南極料理人」

「好き系のオッサンがこれでもかと!」
というのが、私の見る前の感想。
「好き系のオッサンが、ゆるーく、仲良しに、美味しそうに、これでもかと!」
が、見た後の感想。
母に「こんだけ好きなオッサン出してくれはるとほくほくするね」って言うと「変」て一言で…2音の言葉で返されましたけど。いいじゃないか、オッサン。可愛いじゃないか、みんな。


これは、南極は南極でもペンギンもあざらしもいないような極地に派遣されて働く8人のオジサン達を、食というフィルターを介しながら、日常をおもしろおかしく描く…という映画です。オッサン達の真面目な仕事っぷりというよりは、オフタイムのアホっぷりと食事って大事ねーっていうのを描いてます。それ以上でもそれ以下でもありません。ちょっと家族愛とか、ちょっと夢とか悩みとかあったりするけど、特別に劇的に描かれることはありません。泣き所とか、起承転結みたいなのはない。非常にゆるーい感じです。そのゆるーい物語を、これまた個性的だけど、ゆるーい俳優さん達が楽しそうに演じてくれるわけです。

堺雅人演じる調理担当の西村さんが、とにかくイイ。堺さんだから出来る、あの不思議そうなまなざしがたまりません。きょとんとした…というか、「どうしようかなぁ、つっこむべきなのかなぁ」という雰囲気がその表情から出ています。そして、作り出す料理がたまらなく美味しそう。時折出てくる不思議な感じのメニューにはくすくすと笑いがこぼれます。
CMとかにも出てましたけど、伊勢エビのエビフライには笑いが…。なんでもやればいいってもんじゃない(笑)
しかし、あんな極地でフランス料理フルコースとか、中華料理とか、料理人はやろうと思えばできるんですね。かん水について聞いた時の西村さんの素早い動きが「ああ、この人は料理人なんだなぁ。人を食べさせるのが仕事なのだなぁ」と感じました。とにかく食べたくなりますね。
「美味しい料理って人を幸せにする(どんな所でも)」が、この映画の言いたいことなんだと思います。

もちろん、生瀬さんも良かった。あの人はほんとに笑いを取らせるなぁ。今回はコミカルな役じゃないはずなんだけどなぁ。可愛かったです。本さんの「西村くん」という呼び方が、なんか好き。
豊原さんもな。あの人、いやらしい役似合う。いやらしいとはエロいという意味ではなく、ちょっと世間からはみ出た感じの飄々としてニヤニヤしたオッサンという意味合いです(長い)。ヤブ医者っぽいのいいなぁ。むしろ、イメージとしてはいつも酒飲んでる感じね。最後のオチにも笑いました。

しかし、この三人が同じ画面に収まる映画なんてそうそうない気がする。…という感想を、「クライマーズハイ」でも書いていたことを思い出した。
でも「堺・堤・堀部」より、今回の「堺・生瀬・豊原」のがレアな気がする。


個人的にはどんどん汚くなっていく8人の姿に「すげぇ」て思いました。堺さんは始める前に増量して、終わる頃には減量したって書いてありました。役者魂だなぁ。