「ゴールデン・スランバー」

 これは、役者さんの演技力が素晴らしい作品でした。原作のすばらしさはもう本の感想で言ってるからいいでしょう。
 堺さんが、本当に「青柳」という男を上手く見せてくれていた。優しくて、飄々としていて、ちょっと無様で…。何かのインタビューで読みましたけど、監督とただこの「無様さ」に力を入れたみたいですね。自転車倒しそうになって戻そうか悩みながら進むとことか、爆破シーンで「ひゃあ」みたいな情けない倒れ方する所とか。そういわれて見てみると、確かにそれが凄く普通っぽい。
 主人公はヒーローでもなんでもなくて、もちろんちょっとアイドル助けたことで有名人になっちゃってるけど、とにかくただ普通に人生を歩んでいる男が、急に首相暗殺の容疑者にされて逃げまくります。…ストーリー的にはそれだけなんですけど、この作品の重要なポイントは「信頼」。ただ彼に残された武器は、「信頼」。それを盾に、そして武器に、彼はどこまで逃げられるのか。それが小気味良いわけです。 彼を信じている昔からの仲間と、そして今の彼を評価してくれた人達。その協力があって……というラストに繋がります。多分、「もやもや」はそんなに残らない。
 小説わりと長いんですけど、よくここまでまとめたなぁ…という感じもあります。伏線の出し方とか、伊坂幸太郎作品をきちんと分かっていらっしゃる感じの作りで、大満足です。伏線の収束の仕方が、とにかく映画でも見事でした。パズルみたいに収まってく「奇跡」が心地よいんです。伊坂作品の魅力なので、ここには注目して頂きたい所。

 個人的にはキルオが素晴らしかったなぁ…と。あの意味のわからんキャラクタを、濱田岳さんが魅力的に演じてくれてます。あの舌ったらずな感じとか、なんかマンガみたいで凄い良かった!

 こんな感じで他の伊坂作品も映画化してほしいなぁ。ただ、「オーデュポンの祈り」は難しいんでしょうか……?カカシ喋っちゃうからなぁ…。「終末のフール」も私は好きなんですけど。