「メサイア-紫微の章ー」

千秋楽と前楽見に行きました。「前回と違うよ、いいよ、凄いよ、泣けるよ」と感想を聞かされていたので、どんどん期待値が上がっていたのですが、実際見てみると、確かに結構残る感じでした。キャラ萌えだけじゃない、あっつい感じ。


先日も書きましたが、私、松本寛也っていう役者さんを好きになって本当に良かったと思いました。応援してて良かったなぁって。
色んな感想差し置いて、それをまず真っ先に思いました。
誇らしい気持ちというと何様やねんという感じですが、私この人のファンなんだよってドヤ顔して言いたい気持ちというか、こんな役が出来る役者さんなんだぜ、すげーだろと宣伝したい気持ちになりました。

あんなラストにひとりで長台詞で独壇場で、絞り出すような壮絶な演技されたらたまりませんって。
泣いたよ……主役軸にはまったく涙腺がゆるむことも無かったし、心が揺さぶられる感覚はあまりなかったんだが、工藤さんの最期には心奪われた。
あの会場中のすすり泣く声が、全部彼の作り上げたもんだと思ったら、なんか「ふわぁぁ」てなりました。
うまく言えないなぁ……。感動というより感嘆みたいな? 


あんなに重い役をあてがわれるだけの力があって、制作者にも出来ると信じられてるのって、凄いことだと思います。
舞台前のアメスタでは、「自分以外は全員『らしい』感じ。アテ書きじゃないけど、その人にしかできない役になっている」と言われてましたけど、いやいや、寛也さんもキャラ的には違うかもしれないけど、本質的にはまったくもって「らしい」感じでした。
工藤を演じるのが松本寛也で良かったなぁ。
うん、これが正しい感想だと思います。

泥臭くしたいって言ってたのも、ちょっと意外な展開と言っていたのも納得でした。ただのイケメン舞台じゃなかったよ。


内容については、サイトをご覧下さいとしか言い様がない。原作をどうぞ…とか。私もよく分かってない。
武力による戦争のなくなった世の中だが、情報という武器で戦争は続いている……という根底があって、前作まではその情報戦線にいるスパイ「サクラ」を養成する学校と、唯一の救い人となり得る「メサイア」というバディ達の関係を重視した作品だったのですが、今回フィーチャーされてたのはサクラと対立している評議会という組織と、警察組織である公安4係。そして評議会を前回脱退し、評議会に追われつつ組織をぶっ潰そうとしている三栖と周というのが今回のわりとメインなキャラなんですが…

タイトルどこいった(笑)

ちなみに「紫微」を検索すると「北極星を中心とした、小熊座・大熊座・竜座・カシオペヤ座などの星座群にあたり、天帝の住む場所とされた。転じて、天子・天位・宮廷を示す。紫微宮」とか出てきます。
……んー……これだけ見るとよく分からない。やっぱり嶺二さんが出てくるのがわりに重要だったってことかな?

一応物語的には公安4係の優秀な若者が主役…なのかな…?
そこんとこは設定とか色々ツッコミ所があったので、とりあえずスルーの方向でいかせてもらいましょう。ともるくん可愛いけどね!! 廣瀬くんも可愛いけどね!!
とりあえず、三すくみの状態でごっちゃごちゃするわけです。「蠱毒を作りたい」とかいう吾妻さんという人の思惑も絡んで、組織同士が絡み合う話でした。

今回はサクラがほとんど出てこなかったので、既存のファンは物足りなかったかもしれませんが、私は評議会メインで見ていたので、胸熱でしたな。
で、前回井上和彦さん演じていた堤(評議会のトップ)の息子が出ると聞いていて、堤さんに憧れて、その理想のために邁進していた工藤にとってはさぞや鬱陶しい人間に違いないと思っていたら、どういうわけだがとっても仲良しさんで!! そこにまず驚き、そして萌えまくってしまいました。
お互いに煙たい存在で、どうにかして死んでくれないかな…みたいに思っていたらそれはそれで萌えるなぁと思っていたんですが……。ああ、なれそめ知りたい。
トップが北に行ってしまっている現在、工藤さんの唯一頼れる人っていうのが息子の嶺二さんというのもとても良かった……。
武闘派には分からない妙な秘密の暗号とかあったりしてね(でも「I love youである必要があるのかどうか……深読みしちゃうだろ!!)。
頭で勝負している二人なので、アクションも重視の舞台で、まったくアクションせず!! 逃げまどう姿にひたすら可愛いと言い続けたよ、私。
工藤さんなんか腰引けちゃってて、武闘派の方々の影でわちゃわちゃしてて、面白かった…。
「私には頭しかない。だから、これからも助けてくれ」みたいな素直に部下に言うあたりとかも「あれ、工藤さんこんなキャラだったっけ?!」と思ったけど、この人、そういえば自分の理想のためには簡単に頭も下げるし(白銀では土下座してましたな!)、目的のためには手段を選ばない人でした。そのあたりはまだ「こいつら使えるじゃん!」くらいの気持ちだったかもしれないなーと。でも、たった三人になってからは信頼感も凄く伝わってきました。


ありとあらゆる情報をデジタルに置き換えて読み込み、状況を判断するというサヴァン症候群の嶺二さんは、戦争の道具として扱われる可能性もあると危険視されていて、隔離されているんですよね。本人もその高級ホテル並の刑務所生活を楽しんでいる。本来は出来ることもたくさんあるはずなんですが、「頭脳には限界はない。ただ、全ての哀しみを受け止めることができない」という理由で、世間から遠ざかってる。「哀しみなんてひとつもない方がいい」という考えなのに、表舞台に立たされざるを得なくなって「これ以上哀しみが増えるようなら僕は戦争も辞さない」という考えに至るまでの経緯がたまらなくてですね……。
基本、あんまり表情はないんですが、淡々としているだけに怖くて悲しくてですね……。
平野良さんすっげー!!てなりました。

この人、最遊記歌劇伝で「カミサマ」やっておられたんですが、全然違う人でした。えええええ……役者さんすげぇ。てなりました。あの時はただ、その群を抜いた歌唱力と演技に拍手してたんですが、「あはははは!!」て声高に子供っぽく楽しそうにしている姿と、今回の低い声で「君にとって悲しい事実になるけどそれでも知りたいかい」とかいう嶺二さんの姿がまったくかぶらずですね……。声違うやん! 顔違うやん!ってなりました。……今後ちょっと注目したい役者さん。


もう書くことが多すぎて、何から書いていいのか分からない状態ですが、六本木・新田のコンビはひたすら格好良かったな!! あの人達のアクション本当に素敵。さっすがJAE。顔も格好いいので、普通にきゃってなりますよね。「ゴミみたいな戦闘能力」の上司工藤さんを守りつつ、敵をばったばったとやっつけてく姿がとにかく格好いい。この二人に関しては、「かっこいい」しか言えない。
トップが裏切ったから、評議会は事実上なくなった。工藤さんが解散と言い渡したにもかかわらず二人が工藤さんにずっとついていく姿にはちょっとうるっときました。「仕えた人が間違っていたかもしれない、所属する組織が間違っていたかもしれない、だが掲げた理想が間違っていたとは思えない!」と声高に言う所が熱くて…。「どうして貴方がやらないんですか!!」と工藤さんに評議会のトップになればいいと発破掛ける姿も熱くて……。「僕は、その器じゃない」「それなら私達が支えます」というくだりに心の中では「うぉぉぉぉ」てなってました。その後の工藤さんの「参ったな。一人でやろうと思ってたのに……。格好いいこと苦手なんだ、僕」という呟きも良かったなぁ。
とにかくこの三人と、嶺二さんのドラマはぐぐっと迫るものがあって、思い出しても熱い気持ちになります。


ラストの工藤さんが撃たれてからの一連の流れは、もうどうかDVDでも見て下さいと言いたい。
ちょっといいシーンを台詞だけでずかネタバレしてるので、読みたくない人はスルーで!
↓↓

「これは死ぬ傷か、え、どうだ?!」て三栖くんに鬼気迫った感じで尋ねる所とか!!
「僕なんて助けなくても良かったのに」「嶺二さんっ、128√e……」「君は僕のともだちだ」「……日本を頼みます……」の間合いの素晴らしさとか!!
行けと言われたのに残る二人とのやりとり「一度してみたかったことがあるんです。……命令違反というものを」「どちらが強いか決着も付いていませんしね」「……1分、時間を稼いでくれ」とか!! そしてラストの「1分!……経ちました」と倒れ込む二人にぐわぁぁぁって来ます。

あとは、長台詞。「聞こえるか、三栖くん。頭の良い君になら分かるだろう……」というあの例の遺言。
「日本人を、なめるな」
という最後の最後のに、本当にやられた。
これ、全部撃たれてからなので死にものぐるいの演技なんですよね。そりゃあ酸欠になりますって!!



後日のアメスタで聞いた所、かなりBL路線からは脱したいという思いがあったらしく(←軽い表現にしときました。結構過激な発言されてましたけど)、まぁそこはきちんと制作者も意図をくみ取ってあげてるの…かな、とは思いました。もちろん、そういうのを期待していた人も中にはいると思うのですが、その人達もきちんと「すげー」て感動したに違いなくて、今回は双方良かったんだろうなぁとは思うのですが、これが良くない方向に進むことだって無きにしもあらずで、そこんとこはちょっとだけ心配しました。割り切れない思いというには必要ですし、どんな舞台裏があったって構わないのですが、それは明かさなくてもいい部分かしらねー…と。もう少しまあるく言っとかないと、初めまして!な方々が引いていたのではないかな……なんて。そういう人だと知ってる既存のファンはいいんですけどね。
でも、それでも、ヤなヤツに映らないのは人徳だよなぁと……、羨ましくなるわけです。
まだあまり知らない1年ほど前に、「こういう人になりたかった」と言っていた記憶があるのですが、それを思い出しました。
でも、演出家から「この作品と心中して欲しい」なんて言われる役者さんなんてそうそういないと思うんだ。
やっぱすげーや。そんで、原作者から舞台だけのキャラなのに小説に書きたいと思わせるって相当だと思うんだ。


スピンオフ、超絶期待しております!!

というわけで、凄い面白かったです。工藤さんいなくても、次回の展開ちょっと知りたいと思います。