奥田英朗『イン・ザ・プール』

 まずは感想文。
奥田英朗イン・ザ・プール』(文藝春秋
 面白かった〜!! 本屋で、シリーズ2作目の『空中ブランコ』の帯を見た時から気になって仕方ない作品でした。で、母に図書館で借りてもらいました。

 どうしようもないくらいおバカで、救いようがないアホで、色白のブタで、ロリコンのマザコンで、とことん自分本位で、いやらしくてスケベで、もう、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせたくなるようなキャラなんですが、ひょっとして…天才かも?! と思わせます、伊良部医師!! 私、大抵どんな医者でも物語に出てくる医者って好きな方なんですが、今回は別。できれば関わりたくない。だけど、天才かも? と一瞬…ほんの一瞬だけ、思わせる。患者がほんの少しだけ魅了される。やるじゃん、このバカ医者…みたいな。おおよそ、患者に心配されてる医者という段階で医者失格だと思うのですが…。でも結構凄かったり凄くなかったり?!←意味不明。

 精神科医って、こう…理知的で、クールで、内面いじわるで…とかいうイメージがあるんですが(あくまで物語の中の精神科医のイメージね)、そうじゃなければとにかく温厚でニコニコした優しいおじさん…。だけど、伊良部は違う。とにかく自分がおもしろければそれでいいのか!! みたいな。そういう治療をしていきます。精神を病んでいる…強迫神経症とか、被害妄想とか、依存症とか、そういう誰にだって掛かりうるような病に陥ったフツーの一般人が、とにかく困惑するような事を言ったりやったりします。痛快っていうよりは……バカバカしくて、笑えます。「ああ、こいつよりはずっとマシだ…」と思った患者だって少なくないと思われます。

 でも、一応はうまくまとまってるんだから…実は凄い人なのかもしれません。世界中ののんきを集めたような医者ですけど、ただの注射好きな変態ですけど、でもひょっとして、彼中心で世界は回っているんじゃないか、と思わせます。関わりたくはないですが(強調)、次の作品も読みたいと思います。

 あああ!! 今知ったのですが、次の『空中ブランコ』、今日直木賞に選ばれたのですね。タイムリーな時に読んでるものです!! おめでとうございます。

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール