京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』

 まずはようやく読めた京極本の感想文から。
京極夏彦陰摩羅鬼の瑕』(講談社ノベルス
 長くかかりました。いつまでたってもページが進まない感じがしました。まぁレンガ本を読んだのが久しぶりだった…っていうのもあるんですが。最終的に、朝四時くらいまでただひたすら読書して読み切りました。そういえば、『絡新婦の理』の時も、ほとんど徹夜でした。『姑獲鳥の夏』を再読した時も、徹夜でした。京極本には徹夜がよく似合います。憑き物を落とされる感じが、夜明け前の雰囲気に合致する感じでさ。

 さて、今回の話は……『姑獲鳥』から一年…という時に巻き込まれた事件のようですね。過去四度も新婦が初夜のあけた朝に死んでいる由良家。そして五度目の婚姻が……。という横溝ばりな雰囲気でした。おまけに横溝本人も登場。すげー!!となりましした。『本陣殺人事件』くらいしか読んでないのですが、まさに掴みはそんな感じ。呪われた伯爵家。そういうの結構好き嫌いが激しいのですが、今回のはヒットでした。

 そして一番の感想は、関口くんが奮闘している!!ということ。驚きでした。もちろん、彼岸寸前ばっかりの破壊的行為でしたが…。それでも彼は彼なりに頑張っていたのではないでしょうか。「生きて居るということは貴方にとって、どのような意味を持つのですか?」という問いかけに、終始戸惑いながらも、一番真面目に事件を見ていたのではないかと思われます。少し関くんの株が上がりました。どうしようもない男ですけどね。

 ところで榎さんは一体何をしに行っているのやら……。本当に、困った人です。バカです。でも笑えました。目が見えないのに、そりゃもうはちゃめちゃ。関くんじゃないけど、隣りにいたいとは思いません。でも関くんを「猿」じゃなくて「タツミ」と呼びだしたあたりで、なんか「うわっ」と思ってしまいました。違う人みたいです。でも「猿」という方が確かに愛情を感じられるのは私だけでしょうか?

 京極堂に関しては何も言いません。相変わらずです。勉強になりました。特に、その儒教と仏教の融合具合とかについて…。林羅山について、少し分かったような感じがします。ウチとソトという意味合いについても、なんとなく…ぼんやりと、分かった感じが。民俗学って面白いなぁ、と改めて思いました。嫌々憑き物を落として……だけど得たものは多かったのだと思います。あれだけの本が手に入ったのですから…。

 ところで、今回は奇妙にオールキャスト…って感じで嬉しかったです。木場修も一応関係しているし、里村さんも、出てはこなかっけれど、名前が出ていたし。こういう風に、みんなが微妙に関与している感じが物語として好きな感じです。

 由良伯爵については…可哀想な人、という印象が一番強いです。そう、だけど此方の常識を、彼は求めているだろうから…

陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)

陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)

 実は、もう一冊蘇部さんの『ふつうの学校』を読んだのですが、まぁそれは明日書くとします。