『冬青』〜序章〜

その頃の私たちの間柄を明確に示す言葉などなかった。

ただ、そう…恋と紛う程に愛していたのだ。



彼は冬の青い空が美しいと言った。

透き通った冷たさが、私に似ていると言ったのだ。冷たいなんて心外だ、と詰ると、彼は「下手に暖かいより、ずっといい」と悲しそうに笑った。中学生が見せるには、大人びた顔で。けれど、それ以降、私は彼のそんな顔を見ることはなくなった。鈍感な私には気づかない所で、彼がすべてを押し殺すのに、十分すぎる時間が流れていたのだ。

穂積はどこまでも優しかった。そして寂しい人間だった。

私は、そんな彼に何をしてやれたのだろう。
今も、ずっと、それは謎のままだ。