伊坂幸太郎『砂漠』

 伊坂幸太郎『砂漠』読了。
 大学生の頃、こんな風に生きたかったな…と思いました。深謀遠慮もなく、ただあるがままに今を楽しんで、だけど未来に不安を抱えながら…。そして、素敵な仲間を得たかったと思いました。彼等のように、将来的には疎遠になるかもしれない、でもいつもつるんで何かできるような大学の仲間が。くそぅ。若さをエンジョイできなかった(笑)
 そして、伊坂さんらしいメッセージの組み込み方に笑いました。「助けちゃえばいいんです」と。大義名分振りかざしてないで、自分ができることをしちゃえばいいと。ライオンに襲われているシマウマを見て、それを助けることができる術が自分にあるなら、やっちゃえばいい。目の前のものもの救えないで、大層なことは言っちゃいけない。矛盾したって、助けたいと思って助けられるものはどんどん実践すべき。……気持ちいいな、と思いました。そんなこと言っても、結構難しいと思うんですけどね。でも、そういう行動理念は好き。そういう意味では、西嶋は立派だったと思いました。
 そう、五人のキャラクターは、みんなそれぞれに立派だと思いました。特に鳥井なんて。伊坂さんは、そういう弱音を吐かない、ハンデを背負った人間を描くのが上手いと思います。辛いことも、苦しいこともあるのに、笑えるんです。周りを思って、そして強くあろうと自分を戒める。お涙ちょうだいになりそうな部分なのに、それをさも自然に書いてしまう。そりゃそうですよね。「チルドレン」の時も思いましたけど、彼等は人生がそこで終わるわけじゃない。まだ、ずっと、未来を歩まないといけない。その時あるべき姿はやはり自然であるべきなんです。
 青春ポルノグラフィ。少しばかり不思議仕立て。……この物語にキャッチコピーをつけるなら、そんな感じです。

砂漠

砂漠