「タイフーン」

 いや、凄かったです。格好良かったよ、チャンドンゴン!! そんなに韓流スター好きじゃないけど、彼はわりと好きかも。男くさくて、力強くてさ。「力のある牡」って感じがします。
 内容は予想通り結構重かったです。北朝鮮と韓国の隔絶を題材にした映画は多いし、それを見るたびに泣けてくるんですけど、今回は特に政治色が強いかな〜と思いました。亡命を受け入れられず、一族を皆殺しにされた少年が海賊になって、南に復讐を企てる…というあたりが。ただ、これはヒューマンドラマでもあります。お涙ちょうだいな所は、当然家族愛な部分でしょう。長い間生きているかさえも分からなかった姉弟が再会。ああ、それだけで一本物語ができそうです。しかし、一番のポイントは国の密令を受けて海賊シンを逮捕しようと奮闘するカン・セジョンとシンとの対決です。誰がなんと言おうと、彼等2人の決闘シーンが一番の見所だと私は思っています。以下ネタバレ。映画を見る人はすっとばして下さい。

 「世の中腐ってると思わないか? 俺達は同じ言葉を喋っているのに」と、腹の底から声を上げるシンに、それだけで泣けました。ただ、そのセリフだけで、この映画を見に行った価値があると思わせるくらいに、ぐっとこみあげるものがありました。そう分かっているのに、それでも刃を向け合わなければならない彼等に、涙が溢れました。最期の時まで、決して目を逸らさずに…そして吐いた言葉が「来世で会ったら俺達……」ですよ?! きっといい友達になれた…と。2人ともが思っているのに、結局は現世では2人の関係は許されなくて。切ない……。切なすぎます。だから、私は2人が仲良くしているシーンで終わってほしかった…とも思いました。現実では有り得なかった光景。だけど、来世では…そんな風景を見たかった。あるいは、シンが南に受け入れられていたら…という「もしも」の今でも良かったから。2人が笑顔で酒でも酌み交わしているシーンが良かったな、と私は思います。