雪乃紗衣『彩雲国物語 藍より出でて青』(角川ビーンズ文庫)

 忘れていたので、感想文を。
雪乃紗衣彩雲国物語 藍より出でて青』(角川ビーンズ文庫
 藍龍蓮が、大好きになりました。前から好きでしたけど、「デキる男なのに、もうちょっと活躍したらいいのに」と思ってちょっと好きになるのを躊躇していた部分がありました。でも、今回それが払拭されました。颱風の目で、どうしようもないヤツで、厄介者で…だけど、それには理由があったわけです。藍家の為にも、彼は普通であってはならなかった。“こちら側”に簡単に来られる人間ではなかった。いつまでも孤独であって当然だった……。その事実を知って切なくて、一気に好きになりました。彼がわけがわからないのも、じつは演技かもしれない。演技でなくても、彼は自分が孤独でなければならない運命を受け入れている。藍将軍との会話で、ちょっとだけ泣けました。良い兄と良い友人を持った彼は、歴代の“龍蓮”の中でも、きっと一番に幸せ者だと思います。それから、これは確信を持って言えることですが、絶対彼は横笛も下手ではないと思います。わざと音の綺麗に鳴らない笛を使っている…とかだと思います。…じゃないと、ちょっと…ねぇ? せっかく綺麗に謎めいてきているのに、残念だから。
 他の話も感想を。悠舜さんと凛さんの関係が素敵でした。茶州の面々はみんないい人ばかりだと思います。ただ、読んでいて2話目は辛かった。消えたあの人のことを、秀麗が思い出したりしてて、影月くんはさかんに自分の死を思って…。一応カタがついた話なので、何も心配することはないのに、こんな風に考えていたのか…と思うと辛くて辛くて。そして2人の若き州牧の悩み様と頑張りに比べたら、自分の頑張りなんてまだまだだ、とおもうわけです。ところで、秀麗とわんこ…じゃなかった、劉輝はどうなっていくんでしょう? ますます切なくなっていく気がします。それから、秀麗のカラダの秘密は…?
 子供ができない体とかいうんでしょうかね? 一番有り得る話ですよね。だからこそ、劉輝と一緒になることはできない…みたいな。ああ、だとしたら泣ける。そんなありきたりな誰でも考えつくような展開は望みません。