石持浅海『BG、あるいは死せるカイニス』

 こんな内容も書けるんだ!!というのが第一の感想です。石持さんという人は、舞台装置重視なわりに、トリッキーではない“心”を大切にしているミステリの書き手だと思っていました。しかも「悲しみ」を綺麗に描ける人だと。しかし、レーベルに即したのか、今回は今まで3作とは全然異質。ミステリなんだけど、SFです。「女性が性転換して男性になる」というのがあたり前の世の中で、男性候補として筆頭とも言うべき優秀だった姉が殺されたことによって、女子高生が翻弄されていく……というあらすじ。凄いです。こんなの思いつきませんて。しかも、女子高生達が真面目でかわいいんだ。「あの人が男性化したら、まっさきに抱かれたい」とか言ってるし、普通に考えたら倒錯的なんだけど、世界観がしっかりしてるからすんなり読める。だからこそ、なんだか終始「性」について問われている気がしますが…。

 しかし、この話の一番奥にあるのは「怒り」。いつもの綺麗な悲しみとは全然違う締めくくり方をされました。「新境地」という言葉がぴったりです。

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)