有栖川有栖『白い兎が逃げる』
久々の小説家アリス…じゃないか火村シリーズ。こんなタイトルであるからには、さぞやアリスがてんやわんやする話に違いないと思っていたらば、なんか、違った。しかも時刻表ミステリだし。鉄道モノはあまり好きではありません。でも、アリスは散々お馬鹿っぷりを披露してくれたので満足です。火村先生は絶対、アリスのああいう天然な所が好きなんだと思う。暗がりにいる人程、普通の人に憧れたりするもんですから。でもそうやって突拍子もない推理をするからこそ、火村センセも光明を見いだせるってわけで…名コンビ!!
あ、でも、火村センセもお茶目さんではあると思いますが。アリスが頼んだクラブハウスサンドを「全部食っちまったのか」と残念そうにする様とか、天然で愛くるしい。年代物の車に他人から「次の査定通ったら逆立ちして町内一周してやるよ」と言われて、きっと渋い顔をしたに違いないとか、もう表情豊かな様しか思い描けません。クールなのに……。トリックは、「比類のない神々しいような瞬間」が好きです。その時しか書けないモノではありますが、だからこそ、このタイトル。ミステリは旬のモノでもあるのだと思わされました。
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/11/18
- メディア: 新書
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