「ママの遺したラブソング」

 物語は主人公の少女の母親が死んでしまう所から始まります。近くに住んでいた者達にとっては、素晴らしい女性として語られるのですが、少女にとっては何年も会っていない音信不通の母親。彼女には母との思い出もなく、ただそこにあるのは天涯孤独の身の上となったという事実だけ。そして遺されたのは母の住んでいた家。…と、同居人のアルコール中毒のオヤジ二人。最初は同居を拒否するのですが、お互いにいつか追い出してやる…という意気込みのもとに、不思議な共同生活が始まります。

 …とまぁ、簡単に先が読める冒頭ではありますが、王道も丁寧に描かれたら文句はない。彼女が幼い頃は母の思い出を創作して、それを本当だと思い込んだというくだりは、少し泣きそうになりました。そして、その一部が創作ではなく、本当にあったことだったと分かったあのパブでのシーンは印象的でした。どうしようもなく堕落した生活をしていた少女が母の遺した家と、それを取り巻く人々によって少しずつ変わっていく様は、確かに綺麗な展開だったと思います。

 ん、でもコレ、本当のタイトルは「A LOVE SONG FOR BOBBY LONG」なんですよね。日本語タイトルの方がなんか内容に合致している気がしますが…。