日明恩『それでも、警官は微笑う』

 ようやく手を出しました。これも歴としたメフィスト賞の一作。……でも、何故コレをメフィストに送ってきたのかが、やはり分かりません。毛色が違う!! でも不満だったというわけでは決してありません。かなり好きです。ありがちな設定なのかもしれませんが、軽快だし、飽きさせずに読み切ることができました。

 内容…というか、キャラ設定を一言で、乱暴に言っちゃうと「逆・踊る大捜査線(初期)」みたいな感じです。無骨で無口で真直線でキチクと呼ばれる主人公の刑事・武本と、年下でワケありで口から生まれてきたような人を煙に巻くよなう話し方をする上司である潮崎さん。このコンビが追っている拳銃の事件に、ひょんなことから巻き込まれたのが、麻取の宮田さん。二つの組織が追っている事件がリンクして…という所から物語が始まります。この武本さんのまっすぐさが気持ちいいのです。いかつい表情で四角四面で、自分の信じたものに正直で、「そうそう、こういう警察が出てくる小説が好きなのよ!!」と言いたくなるタイプです。乱暴な所もありますが、それは「やらなくてする後悔より、やってしまってする後悔の方がいい」という父親からの教えのもと。一人で突っ走る様が、爽快なのです。で、それに追随する上司の潮崎。彼も最初はむかつくだけのボンボンだったのですが、純粋だからこそ苦しい部分もあるんだなぁ、と気付かされてちょっと泣きそうになりました。でもラストの室井さんばりの宣言には思わず笑顔が漏れました。かぁっこいいよ。

 それから、宮田さん。一つの思いを胸に、自分の夢を諦めて、復讐のために、そして自分の愛した人のために突き進む様は立派でした。そして彼を取り巻く優しい人にも胸打たれました。ネタバレにはなりますが、彼が思いを遂げられなかったのは、良かったと思います。人生そんなものだと……願わくば、彼の道が明るくありますように。

それでも、警官は微笑う

それでも、警官は微笑う