有栖川有栖『女王国の城』

 ようやく読みました。学生アリスシリーズ第4段。長かった……出るまでの待ち時間がな。読み始めると「ああ、これでまたしばらく待つのか…」とかいう気分になって切なくなってついついスピードがゆっくりになってしまいました。
 小説家アリスシリーズももちろん好きなんですけど、やっぱり私はこの学生アリスのセンチメンタルな部分と青臭い部分が好きなんだと改めて感じました。永遠の33歳にはない、未来のある青年が好きです。ちゃんとヒロインもいるし!! でも、5作で完結らしいです。…そうなんだ。まぁ大学卒業したら終わりだよな。今回、江神さんはちゃんと卒業する気なんだと知って、ちょっと嬉しくなったのですが……それでもまだ心配で心配で。十年前と同じセリフを言いたいです。「死にませんよね、江神さん…?」 彼が前向きであろうとすると、余計に死にフラグなんじゃないかと気が気じゃありません。
 しかし、江神さんが不在の前半、後輩達の活躍が光りました。マリアとか格好良すぎです。信長先輩とモチ先輩も、漫才しつつ、部長を取り戻そうと必死だったし。愛されてるなぁ。何より、アリス。可愛い。頑張ったねと褒めてあげたい。マリアのことを心配して、必死に自分にできることを探したりするあたり、きゅんときました。大学生はそうでなくちゃ。でも、アリスはマリアよりも江神さんのことが好きすぎると思う(別に変な意味じゃなく)。特にラストの洞窟のシーン。ひょいとついていってしまう姿に「おいおい」と思った。どんだけ先輩のこと信頼して心配してんだか。アリスとマリアの2人の恋模様?!も大層気になることではありますが、江神さんの生き方の方が気に掛かるのは、これ如何に?! 
 ミステリの内容については、あまり語りません。学生アリスシリーズは、本当にこういう「密室」がよく似合う。雪山とか、陸の孤島とか、隔離された場所とか。しかし有り得そうでちょっと怖い。宗教論はあっさり書かれているのに、そういう土地があったら…と思うと、なんかちょっとね。観光としての宗教みたいな状態と、それを受け入れる村…というのが怖い。いろんなことを隠匿していけるだけの空間というのは、考えると気持ちが悪い。
 最後に。アリスの「性寂説」。私はその考え方が好きです。寂しさを埋めるために、生きているなら、私は生き方上手じゃないかと思うから。

女王国の城 (創元クライム・クラブ)

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