『ミミズクと夜の王』

 万人にお勧めできる本です。児童文学としても、とっても良質だと思います。だから、もっと売れてしかるべき作品だという気がします。

 話自体はとってもシンプルで王道。いや、だからこそ泣けるのかもしれません。
 ミミズクという少女が美しく寂しい夜の王に、ひたすらに焦がれる話。絵面は暗いし黒いし、血なまぐさいし、お世辞にも綺麗とは言い難いのに、存在はどこまでも清い。愛されることも、泣くことも知らなかった、獣になりたかった少女が心を手に入れ、その上で幸せを選ぶ……そういうお話です。
 ラストのあたりはとにかく泣けます。一番優しかったのは夜の王だと思うのですが、個人的にはオリエッタの凛とした感じが好きでした。自由になってもどこにもいかないという選択ができる。その姿勢が、私が一番描きたい強い女性の像なので。

 一気に読んだらもっと泣けた気がしますが、電車の中で鼻水をすすりまくった程度には危険でした。
 今後読む方がいらっしゃったら、一人でいる時に…といってあげたいです。
 

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)