『モダンタイムス』

伊坂さんらしいラストの一文にほっとしましたが、やっぱりなんだか難解です。『魔王』の時に感じた曖昧な故の「難しさ」を、明確にされて「難解さ」に変身しちゃった感じ。付き纏うのはいずれも恐怖。

伊坂さん独特の飄々とした感じと近未来という舞台設定で、おまけに微かにSFじみているせいで誤魔化されがちですが非常に社会的な小説なんです。それが怖い。

終始、社会の一部としての在り方を問い掛けてる。どうしろとは言わない「考えろ」と。歯車の一部として凡庸に気付かないままに過ごすのは楽です。誰が悪いわけじゃない。仕事だと認めれば悪は悪じゃなくなったりする。
ただ、大きな力に利用される前に考えなきゃいけない。その上で見て見ぬフリをするのはアリ。それ相応な覚悟が必要だけど、その選択だってほんとは間違ってない。戦わない人を臆病者とすることこそ間違いかもしれないな、と感じました。もちろん全てに関わらない覚悟をしていることが大前提ですが…。


怖かったのは「検索」。そう、わからないことがあれば私は検索します…。すぐネットに向かいます。便利な世の中。だけどこの本を読むと怖くなります。検索ワードのせいで拷問しに来られるとかいうのを心配してるわけじゃないです。取捨選択しているつもりだけれど、簡単にネットの情報を信じていいのか、と。
不特定多数が唱える言葉が実は操作されたものだったら…それがたまらなく恐怖。10人のうち1人が違うと言っても9人の意見が通るならそれが真実かもしれない。だけど、のこりの1人の意見がなかったことになるのは…気持ちが悪い。

ただ人間は情報でできているわけじゃない。血とか肉とか。そーゆーのをないがしろにしないようにしたいと思いました。

これからの未来に携わる人は読むべき小説だと思われます。