舞城王太郎『九十九十九』

 今日も現実逃避。分厚い本を一気読み。
舞城王太郎九十九十九』(講談社ノベルス
 現実と、虚構の境を見失いました。エログロ以外の小説で、マジな吐き気を覚えたのはこれが初めてかもしれません。一瞬で嘔吐感がこみ上げて来て、妙な寒気さえ感じました。どこからが小説の中の出来事で、どこからが清涼院流水の描いた世界で、どこからが舞城王太郎の描いた世界で、どこからが現実だ?! そういう気分に陥れられました。終始「舞城さんの馬鹿ーっ…清涼院さんの莫迦ーっ」と叫んでいました。そのくらい奇妙で、奇怪で、気色悪い世界でした。「消化不良を起こしそうな小説」ランク入りです。多分19ボックスと同じくらいの位置には来ます。

 JDCトリビュート、私はてっきり「九十九十九」その人のことを描いているのかと思っていたら、違いました。清涼院流水でさえ作中作にしてしまうのですから、彼の描いた九十九十九なんて作中作中作…二重、三重に張り巡らされた作中作に、頭はぐるぐるです。どこが本当か判断がつかなくなります。実際、最後のへんはもう何が何だか分からずに、パニック状態でした。はっきり言うと、万人に絶対お勧めできない作品。たとえ「清涼院好き、舞城好き」という人でさえ、これはちょっと評価がしにくいんじゃないかと思います。もちろん、お祭り小説としては、凄く凄く真摯に、だけどはちゃめちゃに好き勝手書いた舞城さんを肯定的に見ることはできますが……。

 おまけに、相変わらず「段落」とか「改行」というのを無視した書き方です。独特なオノマトペの使い方にも迫力があるのですが、それも酔う原因の一端を担っています。凄いです。舞城王太郎。さすがです。でも精神的におかしくなりそうな小説なので、次はちょっと癒し系な小説を読みたくなりました……。

九十九十九 (講談社ノベルス)

九十九十九 (講談社ノベルス)