「ネバーランド」

(長文注意)これは、多分今年見た中で最高の作品になるんじゃないかと思います。
7月にしてそう断言しちゃえる気がする。1回しか見られないの悔しいなぁ。
結構今までも舞台で「うっかり泣いた」とか「泣かされた」とか書いてるけど、そんなの比じゃなくですね。……化粧落ちてハンカチがドロドロでしたわ。泣ける泣けると聞かされていたので身構えていたのですが、想像以上に泣いた。うっかり嗚咽を上げかけたくらいに泣いた。終わっても涙が止まらなくて、真剣に「やばい」と思った。

いい舞台です。間違いない。本気でみんなにオススメしたい。
DVD買おうかと思うので、周りの人みんなに貸したい。そんな作品です。
ピーターパン少しでも知ってる人は見て欲しい。


その名の通り、これはネバーランドの話なんですが、これはなぜネバーランドネバーランドと言う名前なのかに言及し、フック船長がなぜフック船長なのかを解明したような物語となっています。
大人になったウェンディ達のもとに、「フック船長に大人にされてしまった」と中年体型になってしまったピーターパンが助けを求めに来る所から始まるのですが、最初はただのギャグでしかない「大人姿」のネバーランドの住人達とそのドタバタ(ぜいぜい)っぷりに笑えるのですが、どんどん謎が究明されていくうちに、切なさが増してですね。
「大人になるってどういうこと?」
という問題に、真摯に取り組んでいます。
仕事をすること…? 責任を持つこと…? 家族を守ること…?
この舞台の答えは、多分「大事な何かを失わないために頑張ること」なのだと思います。
そこには責任も絡むし、自分を犠牲にしないといけないことも出てくるでしょう。
そしてそれを決意した瞬間に、子供ではいられなくなる…ということかと。
「大人にはYesと言わなきゃいけない時もあるんだ」みたいな台詞があったのですが、まさにそれかな、と。


しかし…こういう曖昧な書き方してるだけで泣けてくるからね!!




以下ネタバレ。たたんでおきます。携帯からとかは見れちゃうので、注意。特に興味持って、見たい思った方は以下読まないで!!


ネバーランドの「永遠」はなぜ「永遠」なのか。
それは、ピーターパンとフック船長が永遠に戦うということ。この永遠っていうのが鍵でしてね。フック船長だけが知っているネバーランドの秘密。これが、見終わってからもういっかい考えると、じわじわじわじわ来るわけです。
主役はピーターパンだし、メインはもちろんウェンディ達なんですけど、最終的には主役ってフック船長なんだな…と思わせてくれます。
「光は、フック船長なんだ」とピーターが言うシーンがあるんですが、つよく頷きたい気持ちになりました。

フック船長が「昔の俺を見ているようだ」とピーターを見て独りごちるシーンで、勘の良い人は気付くんですが…どんどん種あかしされていって、ウェンディに「うり二つだった」と過去に彼女のお母さんがネバーランドにやって来て、同じように母親になって欲しいと頼んだというの話をするシーンで……ぼろっとまずきますね。

ああ、この人は昔ピーターパンだったんだ……。

「1日だけでいい、お母さんになってくれないか」と頼むフック船長が、切なくて、痛くて、唇を噛みしめます。
「永遠」を守るために、大人になり、ピーターからフック船長に変わった彼が、また今、ピーターにその枷を課す。ピーターパンが大人になり、フック船長になった瞬間に影はピーターパンになる。

影はピーターに憧れて、影のままでいることを拒んで悪さをしていたのに、真実を知った瞬間にに誰も死んでほしくないお前の影でいたいと懇願するシーンにもただ涙。


全てを受け入れた上で、戦う二人の姿は、冒頭での二人の戦いっぷりとまったく同じで、凄いただ馬鹿げた戦いだったあのシーンがフラッシュバックして、それだけで号泣しちゃいました。覚悟を決めた二人が楽しそうに戦うもんだからさぁ……

大事な「永遠」を「永遠」で続けるために、フック船長は死に、ピーターは大人になってフック船長となって、新しいピーターパンと戦い続ける。

役者さん達が全力で汗だくでそれを見せてくれるもんですから、圧倒されるとしか言えないです。

あと、椎名鯛造さんは、本気で身体能力の高さに目を剥きます。
5月も「リアル悟空…」と思ったけどね、今回も「ピーターパンがいる…」と思いましたから。あの人、マジで空飛べそう。ぴょんぴょんくるくる、本当に体が軽いし…


そんで、ちょっとだけ考えてしまったコト。
途中の戦いでフック船長がピーターの手を切り落とすシーンがあるんですが、それは要するにピーターを「フック船長」にさせるための用意なわけですよね。残忍に見えるシーンが、ああ、そういうわけかなるほどな…とラストは納得できるんですが、もうちょっと深く考えると、めっちゃくちゃ切なくてですね……。
あれは、今のフック船長が付けてしまったフック船長の「符号」なんだと仮定すると……。その符号のためだけに、左腕を無くさなきゃいけなくなる今後のピーターにどんだけ申し訳なさが募ったかな…と。自分の不注意が招いた、「フック船長」の姿の改変に、胸が痛んで仕方なかったと思います。
そういうの考え出すと、もうフック船長が大好きになります。ネバーランドを誰よりも愛してヒール役に徹して、その秘密を抱えたまま生きていくって……どんなヒーローよりも格好いい。


そんで、これをやってるのが唐橋充なわけですよ!!!
格好いいし、可愛いし、殺陣も凄いし、最強です。ジャックスパロウ気味のヒゲと髪してるので、フック船長似合うよなぁ。
あのね、「参考に」(ひろやさん)とか「ネタ集めに」(ひろちゃん)っていう創作概念ありきの舞台の見方じゃなくて、純粋に「かぁっこいい……かわいぃぃぃ」てなるからね。そんで舞台降りたら残念な37歳で。だめんずとは言いませんけど、へにょーんとした雰囲気とのギャップが……くそぅかわいい。多才でムカツクんですが、素直に認めておこう。好きです。(珍しく認めた!)
もうどんどん唐橋熱が上がっていきます。うう……次の舞台も見たいよぅ。





いい加減、舞台感想のカテゴリ作ろうかという気になってきた。