藤原伊織『蚊トンボ白髭の冒険』

 日曜日、予定通りに藤原さんを読み切りました。『蚊トンボ白髭の冒険』(講談社)……正直、その設定のファンタジーな感じに最初面食らいました。何かの伏線かと思ったくらいです。いや、蚊トンボの存在がさ……。凄い引っかかりで、だけどハードボイルドに馴染むのだから不思議です。ええ、今回もしっかり朴訥とした男が意志を持って立ち上がる話でした。日陰で決して表舞台には立たない、立てないと思っている彼が巻き込まれ、自分の問題だと言って頑張る姿は読んでいて心地よかったです。夢を諦めた男は、それだけで切ないです。私としては、今回もきたきたっという感じの、サブキャラ…黒木が気に入りましたけど。頭の良いインテリ風の野心家。それでいて淋しい過去を持つ。彼の小さい頃の風景が文章に出てくるたびに、私は泣きそうになりました。そしてラストでも例に漏れず涙。本をぱたんと閉じた瞬間にぽろっと…ぽろぽろっとくるのです。藤原マジック!! ラストの盛り上げ方は尋常じゃない。やはり大好きです。藤原伊織

蚊トンボ白鬚の冒険

蚊トンボ白鬚の冒険