日明恩『そして、警官は奔る』(講談社)

 読み応えがありました。骨太の警察小説です。罪を犯しているとわかっていて、それでも……人情的には認めてあげたい犯罪に対して、武本はどう動くか……。いや、もう武本さんはどこまでいっても武本さんです。無骨で、クソ真面目で、真摯で。ここまで正しい人なんて他にいないんじゃないかな? だからこそ、無口でも、融通が利かなくても、理解してくれる人がいるんですよね。だから、「誰よりも正しい部品でありたがっているのに、それが浮いて見えるのは、警察自体がおかしいのだ…」というような小菅さんの言葉は少し哀しかったです。やっぱり理解されるのは難しいのか、と思ってしまうから。それでも、そんな思惑なんて武本さんには関係ないのでしょう。星取りに興味はなく、単に犯罪を減らす為に奔走する武本さん。これは、男性も惚れるタイプの主人公です。

 それから、武本さんの相棒である和田さん。彼の過去には涙しました。いけすかない、罪を憎んで、人も憎む…というタイプの警察にはあるまじき行為を平気で行う「冷血」…でも、彼がそうなったわけを鑑みると、ほんとうに、ぐぐっと胸が苦しくなるのです。そして、パートナーを代えてくれと上司に言った理由にも。自分を傷つけることでしか、生きていく道を見いだせなかった人よりも、ずっと高尚で、ずっと見事な生き様だと思いました。

 それから潮崎さんな。もう頑張れとしか言えないけど、覚悟の決め方は拍手ものです。っていうか、母と兄が怖い……。早く、上で活躍する姿を見たいです。「先輩が働きやすい世の中にする」みたいな宣言には、正直照れましたが。

そして、警官は奔る

そして、警官は奔る