「ドグラ・マグラ」

極上文学という朗読劇シリーズの第6弾。
朗読劇と言うと、突っ立ったまま(または座ったまま)台本を読む…みたいなのを想像されるかと思うのですが、このシリーズは全然様相が違います。セットも面白いの組まれますし、普通の演劇と同様に動き回るし、むしろ本が邪魔じゃないかと思うような時もしばしば。でも、本が効果的に使われてる所もいっぱいあって(落語で扇子とか手ぬぐいが使われるみたいな感じを想像頂きたい)、とにかく演出が凄い。あと、有名な文学作品を取り扱うので、文学ちょっとでもかじってたような人には超おすすめしたい舞台なのです。まぁ好き嫌い分かれる気もしますが。私は大好き。好みどんぴしゃなんですよね。


最初は「藪の中」のネット配信を見て、ドはまりして、次に知ってる人が一人でも出てたら生で見たいーーー!て言ってたんですが、まさかのドグマグ、そして寛也さん公開オファときたら、もう見に行かないわけにはいかない!!

起承転結始まる所がそれぞれ違うウロボロス形式で、配役はダブルキャスト…主人公の青年に至ってはトリプル…いや、クアドラプルキャスト。そりゃあ色々見たくもなりますって。

青年役は全部一応見られて良かったなぁ。それぞれに違う雰囲気で、それぞれ味があって素晴らしかったです。玉ちゃんのは特に怖かった……。似合いではありますが。あのイっちゃった目……すげぇよ。個人的には植ちゃんのあどけない表情の青年も良かったかと。桑野植田が並ぶと、本当に美少女コンビでたまらない。可愛い子に可愛いって言われてる桑野くんに萌えたりもしました。倒錯的。

寛也さんを見に行ってるので、必然的に同じ若林教授役のkimeruさんのやつは見れなかったのですが、ちょっと生でも見たかったなぁと思いました。全然存じ上げておりませんが、しゅっとした意地悪そうな顔つき好きなんだよね、とパンフ見て思っていたのです。……が、7月公演のチラシの中にバスツアーの広告があって、印象が変わりました。ぶっちゃけ見た瞬間吹いたよね。……ひろちゃんと同じアレですよ……近ツリ……。え、この方…そういう方なの? え……?(しかも値段がお高い!!) あ、うん、でも偏見は良くないんだけど。え………?
(しかも同い年でしたびっくり)


正木博士のブラザートムさんの声は抜群に良くて、チャカポコするトコもリズム感良くて、かなり満足度高い博士でした。でも酒井さんの早口っぽいのも凄く好きで、もう1回酒井さんの見たかったなぁとも思いました。絡むシーンがエロかったし!! 目線が合うから…とUさんが解明してくれてましたのでなるほど!となりました。


具現師さん達はどなたも味があって良かったなぁ。どのシーンでも出てくるから、一番大変なのは彼らだと思います。モブ兼黒子さん兼キャスト達の影みたいな役割を担っておられるので、4人しかいないのに、次々役というか…立場を変えて出手来られるの凄かった……。あかまさんも可愛くてさ、前世当てのコーナーは秀逸でした。

そう、真面目な舞台の中に唐突に挟み込まれるゲームが毎回楽しみでして! 引いたガードに書かれているものが自分の前世〜てことで体が勝手に動くという体でジェスチャーゲームみたいになるんですね。
「炙りとろサーモン」はなかなか酷かったけど、もっとひどいのも一杯あった。「本能寺の変を見た寺の住職」とか(笑)
ノリノリだが必死なキャストが可愛くて!!
人物じゃなくなっていってるし、「前世」なハズなのに「お題なんだっけ?」とかカード確認したりするし、笑えて仕方なかったです。
それを当てる博士も、ふざけるもので、寛也さんのツッコミが大変そうでした。



あ、内容のことまったく触れてない。
ドグマグ自体はもっと複雑怪奇で気持ち悪いと思うのですが、上手にぎゅっと濃縮している感じがしました。ちゃんと必要な所は押さえている…という感じ。細かい筋書きについては「読んで」しか言い様がない。
ウィキで検索して下さい。とにかくぐわぐわした目眩に襲われますので、読む時はがんばれ、と。
精神病棟での記憶のない青年と、彼を取り巻く家族と、精神病について壮大な研究をしている博士の巧妙な罠と、衒学っぽいことも山盛り出てくるし、どう説明していいやら。
一言で説明できないものです、間違いなく。
作中作ぽいとこもあるし、幾重にも合わさったどこが現在かわからなくなるような作りしてるので、メタミスと言われたりもします。叙述トリックというか…むにゃむにゃ



というわけなので、やはりキャストと演出のみについて語るとします。

すげぇと思ったのは「生演奏」な。舞台まるまる一人がキーボードで生演奏されてるんです。しかも裏方じゃなくて、見えるとこで。「奏師」てなってたかと思うのですが、たしかに黒子さんなわけではないサポート役の「具現師」さんと一緒で舞台の一部なんですよね!! こんなの見たことなかったんでびっくりしました。楽曲としてはもちろん毎回同じなんですが、アレンジ毎回違うし、狂人の一人として鍵盤ハーモニカで演奏して動き回る、あのシーンは本当に毎回違って、なのに前の演技邪魔してなくて、たたただ「すげー」…て。「白い薔薇が〜赤くなって〜かーれーるー♪」と舞踏家の狂人が踊りながら変な節つけた歌を歌うんですがそこも途中の回から音拾っておられて、「すげー」と。とにかく見事でいちばん拍手したい方でした。


それから、藪の中見た時も仰天したのですが、役の台詞だけを追うのではないというのが凄いですよね。一応「青年」とか「若林教授」とか「正木博士」とかって役がついているのですから、この舞台の形式を知らない方はその役の部分だけ言いそうな気がしちゃうと思うのですが、全然違います。唐突に別の役所の台詞を言ったりもするので、場面展開がめまぐるしいったら。つまり、唐突に女形になったりもする。これについていけないとまず困惑するので、見る機会がある方にはお伝えしときたいです。
そしてひとつの台詞が終わってから次の台詞…という風にならない部分がいくつかあります。被さって被さって何を言ってるか聞こえないようなシーンですね。どの人の言葉を聞いていいのか分からない。聞こえなくていいんでしょうね。不確かな、不穏な感じの演出で、単語だけ掬い取って聞こえて来るくらいでちょうどいいんでしょう。その怒濤具合が凄いので、これは是非見て欲しい部分の1つです。同じ台詞を繰り返し繰り返し使う所とかも。



というわけで、長々書きましたが、楽しみました!という一言で十分かも。